さっぽろカフェ連載(21)/喫茶 つばらつばら クラシック
喫茶店文化を次世代へと
“喫茶 徒歩71歩“の文字を目印に坂をのぼる。
店内に流れるクラシックミュージックや、赤い別珍の布が張られたボックス席、カウンターに積まれた文庫本。
そして大きな窓から眺めるこんもりとした緑の景色。
以前この場所でお店を営んでいたマスターによる、よき喫茶店文化の魅力はそのままに、バトンは「喫茶 つばらつばら」の出村さんへと渡された。
さらに居心地のよい場所へと生まれ変わり、「喫茶 つばらつばら クラシック」としてスタートしたのは2020年春のこと。
魅惑のお食事メニュー
メニューは王道の喫茶メニューが並ぶけれど、こちらに来たなら看板のハヤシライスをぜひ。
やわらかな酸味を感じるソースの上に、ぽこぽことのった愛らしいグリンピースの佇まい。スプーンでひとすくい、ごはんの上にとろりとかけて頬張れば、思わず顔がほころぶ幸せの味がする。
そしてもし朝早く目覚めてしまったのが週末なら、土日限定のモーニングセットを。
和食の日があったり、サンドイッチの日があったり、その日によって様々だ。
緑に囲まれてぼんやり美味しいコーヒーをすすりながら、その日をどうやって過ごそうか、予定を立てる時間すらも楽しい。
心くすぐるあれこれ
3種類あるパフェのネーミング(「昭和」「平成」「令和」)や、カスタードプリンにのった真っ赤なさくらんぼの可愛らしさ。
冒頭に書いた“徒歩71歩“が、店主である出村さんご自身が藻岩山麓通りから歩いた歩数だというエピソード。
メニューに添えられたさりげない言葉の選択ひとつひとつ。
そのどれもが心の奥に仕舞った乙女心をそっと刺激しては、まるで初恋のときめきのように私の胸をきゅっとさせる。
(そしてたぶん、そんな偏愛を持って通う常連も多いのではないかと、密かに思っている)
四季の移り変わりを愛でる
カウンター席では時折やってくる小鳥を見つけた誰かが、野鳥図鑑を開いてなにやら楽しそうにおしゃべりしている。
この緑の景色も冬になれば真っ白な銀世界が広がって、きっとエゾリスが目の前の小枝を駆け抜けるのだろう。
そんなことを想像しては、季節の移り変わりを待ちこがれるのである。