【たすけてドクター】007. 生理不順の原因は？
生理不順の原因は？
Q. 今年5月から生理が来ません。彼氏も半年以上いないし、そんなにダイエットもしていませんが、最近ストレスがたまっていて、たまに過食になったり、イライラしてしまいます。カルシウムや鉄分のサプリメントも飲んでるし、生理ではないけど血の少～し混じったおりものが2日くらい下着につく程度ならありました。生理がこないからこんなにイライラするんですか？
(24歳・家事手伝い)
A. 生理痛と並んで訴えの多いのが生理不順にまつわる悩みですね。生理がない、ということは排卵がない、ということですから、将来子どもがほしいと思っている女性にとっては由々しき問題です。原因は様々ですが、いろいろ検査をして、排卵がない理由を見極めることが大切です。
18歳になっても初潮そのものがない場合を「原発性無月経」、初潮後、途中から2カ月以上生理がない場合を「続発性無月経」と呼び、多くの場合は後者です。このかたもおそらくこちらでしょうね(無月経の期間が2カ月未満の場合は「稀発月経」と呼びます)。
子宮の内膜は、卵巣から出る女性ホルモンによって一定周期で厚くなったり、はがれ落ちたり(これが生理です)しますが、その働きを調節している「下垂体」という器官が脳の中にあります(鼻のつけ根からまっすぐ奥に入ったあたり)。そこから出る「下垂体ホルモン」が、卵巣から出る女性ホルモンを調節しているわけです。
で、下垂体のこの働きは、さらに「視床下部」という器官(下垂体の少し上あたり)から出るホルモンによって制御されています。女性の性周期の維持には「視床下部│下垂体│卵巣系」というシステムが関わっているわけで、かなり複雑なんですネ。視床下部は「間脳」という神経中枢の部分にあるので、食欲や情緒の変調に影響されます。極端に太ったり痩せたりした場合や、心配事がある場合などに生理の周期が狂うことがあるのはこのためです。
さて、「続発性無月経」では、前述のシステムのどこかに障害があるということになりますが、多くは軽いもので、女性ホルモンを投与して生理を起こさせると、システムが"活気づいて"治ることがあります。これでダメな場合は、血液中のホルモンの値を見たり、下垂体が視床下部ホルモンにちゃんと反応するかどうかを調べたりして、必要に応じて薬を出します。
これとは別に、直接は関係のないホルモンが原因で生理が止まったり不順になったりすることもあります。
プロラクチンという、乳汁を出させる下垂体ホルモンがありますが、これが過剰に分泌されると、本来は上位であるはずの視床下部が抑えられてしまい、下垂体を刺激するホルモンが出なくなってしまいます。すると、下垂体は卵巣を刺激するホルモンを出さなくなり、生理がうまくこなくなります。
…つまり下垂体には、プロラクチン担当の「ショムイチ」と、卵巣刺激担当の「ショムニ」があって、その両方を「視床下部部長」が統括しているのです。今の話は、ショムイチ課長が部長よりいばっているために部長が萎縮してしまって、ショムニ課長にもハッパがかけられなくなり、結果、ショムニが卵巣刺激をサボッている…みたいなものですナ。
授乳期のお母さんは別として、プロラクチンの過剰分泌の原因として比較的多いのは「薬」です。元来は胃薬として用いられ、現在は抑うつ状態の改善によく使われる「スピルリド」が代表例ですね。
ほかの原因としては、稀にですが、下垂体にできた腫瘍がプロラクチンを作り出している場合があります。この腫瘍は大きくなると視神経を圧迫し、目が見えにくくなってきます。産婦人科で「目の見え方は正常ですか」と聞かれることがあるのはこのためです。ごく稀な例なのでそう心配には及びませんが、脳腫瘍で生理が止まるという話にはビックリしてしまいますネ。この場合の治療は脳外科手術が主体ですが、腫瘍が小さい場合や、原因不明でプロラクチンが増えている場合には飲み薬を用います。
甲状腺機能低下症でもプロラクチンが増えることがありますが、これは甲状腺を治療すれば治ります。
最後に、診療で気が付いたことをひとつ。生理日を聞くと「終わった日」をおっしゃるかたが多いのですが、こちらが知りたいのは「始まった日」です。終わった日は関係がありませんので、念のため(笑)。
