【たすけてドクター】075. 「乳腺症がガンになる」って本当?

2018年8月1日

「乳腺症がガンになる」って本当?

Q. 以前、乳房にしこりがあり「乳腺症」と診断されました。現在は経過観察中ですが、専門書などでは「ガンへの移行もありうる」と書いてあったのでとても心配です。今後、注意する点などはありますか? また以前「乳房と子宮はつながっている」と聞いたことがあります。乳房にしこりができると、子宮にも腫瘍ができやすいのでしょうか?
(28歳・会社員)

A.  乳腺症は乳房の疾患の中でも非常に多いもので、乳腺外来の30~50%を占めています。症状としては、しこり、痛み、乳頭分泌などで、左右共に症状がでることもあれば、片方だけのこともあります。女性ホルモンが関係しており、閉経前の女性に見られるので、年齢的には30代~40代に多くなります。全女性で見ると6割の人に乳腺症があるという報告もあります。



 では“しこり”は何が硬くなったものなのかを、これからご説明しましょう。
 卵巣からはエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)という2種類の女性ホルモンが出されています。女性ホルモンが乳腺を刺激するのですが、もう少し詳しくお話しますと、エストロゲンは乳管(乳腺で作られた乳汁を乳頭まで導く管)や間質(乳管や腺房を支えて栄養を供給する)を増やし、プロゲステロンは主に腺房(乳汁を作るところ)を増やす女性ホルモンなのです。

 生理前になると乳房が張って痛くなる方が結構いらっしゃいますが、生理前にはエストロゲンもプロゲステロンも増加しますので、今説明した部分の体積が増えるため症状が出るわけです。エストロゲンの過剰状態が続くと乳管や間質の量(体積)が増え、特に間質は血管が拡張してうっ血した状態になり、乳腺全体が張って硬くなりしこりのようになって痛みも出ます。乳腺は多かれ少なかれ女性ホルモンの影響下にあるわけですから、乳腺症というのは正常の変化の少し強い状態と考えていいでしょう。

 治療は軽度であれば必要なく、6カ月に1度くらいのフォローで経過を見ることが多いのですが、症状が強ければエストロゲンを低下させるダナゾールという薬を使うことがあります。もちろん対症療法として「バファリン」などの鎮痛剤も適用になります。
 日常生活で気をつけることは、乳腺症はカフェインや脂肪を摂りすぎると悪化するので、お茶、コーヒーの飲み過ぎに注意し、肉食を控えましょう。

 さて、問題は「乳腺症があった場合はその人は乳ガンになりやすくなるのか」という“乳腺症とガン”との関連です。乳腺症は病理学的にガンに進みやすい“増殖性病変”と、正常の乳腺とガンの発生率が変わらない“非増殖性病変”に分かれ、乳腺症のほとんどは非増殖性病変です(99%くらいといわれています)。つまり乳ガンの発生しやすいタイプは稀で、大半は“ガンに結びつかない乳腺症である”というわけですから、実質的にはガンの発生率が上がるのかどうかはビミョーなところでしょう。

 大切なことは、しこりを見つけたら、とにかく病院に行って検査をしてもらうことです。「フォローが必要である」と言われたら、キチンと通院しましょう。なお、乳房検診は触診だけで済まさず、超音波装置やレントゲン写真といった画像診断を加えた方がいいのです。触診だけでは小さな病変は見逃す可能性がありますので…。ちなみに乳房は産婦人科でも診るところはありますが、本来の担当科は外科になります。

 最後に、乳房のシコリあるいは乳腺症と子宮の腫瘍(筋腫やガンなど)との関係ですが、子宮筋腫のある人の20%に乳腺症があり、これは通常の2倍多い、という報告があります。子宮内膜ガンも乳ガンとの関連性は言われており、どちらもエストロゲンが高い状態でできますから、リスクが上がる可能性はあると思います。ちなみに子宮筋腫と子宮ガンは関係がありません。筋腫がガンになることはないので、念のため。

poroco本誌過去掲載分から一部抜粋で掲載しています。

 

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