さっぽろパンスタイル(22)/ Miyanomori Bread 117
札幌で活躍するパンコーディネーター・森まゆみさんのWEB連載。札幌のパンにまつわる、あれやこれやの美味しいお話をチェックして!
“安心、かわいい、おいしい”がコンセプト。アイデアいっぱいの週末パン店MiyanomoriBread117
「Miyanomori Bread117」(通称ミヤブレ)が開業したのは2013年。今年で9周年を迎える。
製造から販売まで店をひとりで切り盛りするのは川島理香子さん。開業当初はパン職人を迎えて、自身は製造補助と販売を担当していたが、後に、ほぼ独学でパンづくりを学び、自分スタイルのパン屋をつくり上げていった。
コンセプトは「安心、かわいい、おいしい」の3つの柱。納得する材料を使って、ちょっと小さくてぷっくりとしたフォルムの、川島さんの感性が宿るおいしい法則で仕上げたパンが店頭に並ぶ。
北海道産小麦をベースに、白神こだま酵母やレーズン種の自家製酵母で発酵させた生地が同店の柱になる。
「お客様はもちろん、家族や友人に安心して食べてもらえるパンをつくりたい」と、材料は川島さん自身が厳選する。
ユニファームの有精卵もそのひとつ。季節限定のパンがあるのも、あくまでも材料が手に入る時季を優先する。
営業は週末の3日間。金曜、土曜、日曜に集中して川島さんのパンエネルギーが注がれる。
自宅兼店舗は、木の温もりを感じる内装と窓から見える森の景色
商品アイテムは約30種類。
食パン生地、菓子パン生地、ブリオッシュ系の生地などパンの種類に合わせた基本の生地を7~8種類を仕込む。
「パンのアイデアは突然降りてくるんです」と川島さん。食材を見たとき、味のイメージが湧いたときに、完成したパンのイメージが先に浮かんで、後から味の組み立てをするという。
料理上手な川島さんには料理でもパンでも既成概念はない。「ただおいしいものを作って家族に、友人に、そしてお客様に食べてほしいだけ」と川島さん。
親子で訪れる常連も多いという。小さなお客さんのために陳列棚は低く設置している。
他のどこにもないパンを求めて、週末の小さな店内は賑わう。
季節限定「りんごぱん」
「りんごぱん」は季節限定。
毎年11月下旬から3月末(今年は4月上旬頃)まで販売する。
菓子パン生地と同量(70g)の自家製りんごフィリングを巻いて焼いた同店の人気商品。
しっとり柔らかなパンと少し歯ごたえを残したりんごフィリング。シンプルでありながらやさしい甘味のパン生地と、酸味と甘みのバランスを整えたりんご。ちゃんと考えられた構成が「おいしい」を生み出している。
余市産の低農薬りんご「紅玉」を毎年旬の時季に仕入れている。
その数は、1箱40個入りを10箱!
皮をむいて、刻み、砂糖とレモンだけを入れて皮と一緒に煮る。他に味付けはしない。
沸騰してから10分程度、形が崩れない程度に仕上げて、りんごフィリングが完成する。
汁を切ってからパンと合わせる。切った汁はりんごゼリーになる。
一度に作って冷凍し、その日の分を解凍して使う。全部使い切ったら販売終了となる。
2種類のメロンぱん
開業当初からある「メロンぱん」のレシピは川島さんのお母さんから伝授された。
キレイな薄緑色はクロレラの粉末を使ってビスケット生地にしている。
「ほうじ茶メロンぱん」は、しっかりした色を出し、風味をかんじるように、炭火焙煎ほうじ茶を“これでもかっ!”というくらいたくさんの量を入れてビスケット生地を作る。それがちょうどいい具合になるのだという。
イングリッシュマフィン
卵・乳製品不使用で、きび糖・豆乳・太白ごま油を配合した独自製法の生地で焼き上げる「イングリッシュマフィン」は、サクッとふわっとした食感。
ほんのりした甘さを感じつつも、素朴な仕上がり。
真横からフォークを刺してザクザクと突きながら一周回して、上下に分けてバターをのせてトーストする。
ザクザクした表面の先端が焦げてカリカリになり、そこへバターがじゅわーっと溜まったところをかぶりつくのが、イングリッシュマフィンの正しい食べ方。と、私は信じている。
甘いブリオッシュ生地の上に、刻んだココナッツと卵&砂糖を混ぜたフィリングをのせて焼いた、その名も「ココナッツ」
ココナッツの香りと上品な甘さを感じるミヤブレの人気おやつパン。
料理でもパンでも、店主の川島さんは常識に捉われないおいしい味の組み立てを楽しむ。王道の組み合わせを熟知しているからこそ、おいしい組み立てのアイデアが湧いてくる。
日曜日限定のスコーンに、そんな川島さんのアイデアが詰め込まれている。北海道産小麦100%全粒粉入りの粉にきび砂糖・よつ葉バターを混ぜた生地をベースに、さまざまな具材が加わる。
写真左から「オレンジ×ラムレーズン」「ドライトマト×クリームチーズ」「紅茶×プルーン」
他にも「梨×レモン」「ブルーベリー×マシュマロ」など。店主の気まぐれ(川島さん談)で中身が変化する。
週末の3日間に訪れる
宮の森ジャンプ競技場へ向かう山の途中にあるMiyanomoriBread117は、森を見渡す閑静な住宅街の中にある。
山小屋風の木の建物の一部が店舗である。
店主が自由な発想でおいしい組み立てから生まれたパンを求めて、週末の3日間の店内は賑わう。
そろそろ季節限定の春のパンが並ぶ頃だろう。
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店名
ミヤノモリ ブレッド 117Miyanomori Bread 117
- TEL 011-303-1119
- 住所 北海道札幌市中央区宮の森1条17丁目1-12
- アクセス バス宮の森2条17丁目停すぐ
- 駐車場 あり/2台・無料
- 営業時間 11:00~17:00
- 定休日 月~木曜
- URL https://www.instagram.com/miyanomoribread117/
パンコーディネーター(日本パンコーディネーター協会認定パンコーディネーターアドバンス)
“パンと人を繋ぐ”をテーマにパンと共にあるライフスタイルを提案。
パンイベントの企画・コーディネート、ベーカリーアドバイザーとして活動の場を広げる。
パンとその背景にある様々を取材し、専門誌・テレビ・ラジオ・雑誌などの媒体でパン情報を発信。
消費者向けパン講座「もっとおいしいパン生活」「森まゆみのおいしいパン案内」講師
(株)パンニュース社(東京)ライター。
パンに関するコラムの執筆、講演。