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【たすけてドクター】015. 子宮内膜症について知りたい!

2018年8月1日

子宮内膜症について知りたい!

Q. 私は子宮内膜症だと診断されています。子供を産んだら、それが良くなるというのは本当でしょうか。また、治療に使うホルモン剤の体への影響はどうなんでしょうか。
(28歳・OL)

A. 子宮内膜症については「002.生理痛でユウウツ」で1度書きましたが、ご質問がたびたびあり、婦人科的にも重要な疾患ですので、改めてご説明します。

 女性の生理は、子宮の中を裏打ちしている内膜がホルモンの作用で厚くなり、それが剥(は)がれて出血となるものです。子宮内膜症というのは、本来子宮の中だけにあるはずの内膜がほかの場所(例えば卵巣や直腸、腹膜など)にできてしまう(これを異所性内膜と呼びます)病気です。

 異所性内膜も本来の内膜と同じように、ホルモンの作用を受け、生理時には剥がれて出血します。そのために生理痛がひどくなるんですね。また、"剥がれて出血"を繰り返すと、その部分に周囲との癒着が生じ、特に直腸や子宮周囲に癒着があると、性交時や排便時に痛みが出ることがあります。

 この癒着が卵管周囲に生じると、卵管内に卵を取り込めなくなるため、不妊の原因になります。また、異所性内膜が子宮の筋肉の中にできた場合には、子宮が大きく腫れたような感じになります。これを特に「子宮腺筋症」と呼び、症状としては生理痛のほかに月経量が多くなることがあります。

 原因は、昔から「月経血がお腹の中に逆流するためだ」ということになっていますが、免疫が関係しているとか、最近はダイオキシンのせいだとかいろいろ言われています。でも本当の原因はまだ分かっていません。

 ただ、内膜症の病巣は女性ホルモンによって元気になるので、薬で生理を止めて女性ホルモンの体内レベルを下げることが、直接の治療になります。

 飲み薬や鼻に噴霧するもの、注射など様々な投与法があります。ただ、長い間生理を止めていると、若干ですが骨が弱くなったり、更年期障害のような症状が出るので、あまり長期間は使えません。普通は4~6カ月間使用します。その後、生理は自然に復活します。

 飲み薬で治療した場合には、男性ホルモンに似た作用のある薬を使うので、体重が増えたり、毛深くなったり、ニキビが出やすくなったりすることがありますが、噴霧剤や注射ではそのようなことはありません。

 更年期障害のような症状がある場合には漢方薬を使用したり、「アドバック療法」といって、女性ホルモン剤を少し飲んで、低下したホルモンのレベルを少し戻すこともあります。

 注射による治療は効きがいいので副作用もそれだけ強く出る傾向がありますが、来院は月に1度でいいという利点があります。ほかの薬ですと2週に1度の来院になりますが、体の調子を見ながら薬の量を調節できるのがいいところです。

 ちなみに、妊娠中は生理が止まっているため、自然に子宮内膜症の治療になっています。「子供を産むと良くなる」というのはこのことを指しているわけですネ。

 異所性内膜が卵巣にできると、出血が繰り返されて古血の塊ができ、卵巣嚢腫になることがあります。内容物がチョコレートに似ていることから、普通「チョコレート嚢腫」と呼んでいますね。

 超音波診断でおおよそ診断がつきます。小さければ放っておくこともあり、治療薬で縮小することもありますが、チョコレート嚢腫があれば子宮内膜症であるのは明らかですから、生理痛が強ければお腹を開けて内膜症の病巣を焼灼したり、癒着があればそれを剥離し、同時にチョコレート嚢腫も取ったほうがいい場合があります(卵巣は普通残します)。

 子宮内膜症の医学的な確定診断は、お腹の中の状態を確認してつけることになっていますが、内膜症を疑った患者さん全員を入院させてお腹を切るのは大変ですから、実際には症状や診察の結果から内膜症と考え、治療を始めてしまうことが多いのです。お腹を開けるにしても、現在は腹腔鏡手術というのがあり、小さな穴を2~3カ所開け、内視鏡を入れてお腹の中を観察し、先ほど述べたような手術まですることができます。入院期間が短くて済むので、忙しいかたにはいいでしょう。

poroco本誌過去掲載分から一部抜粋で掲載しています。

 

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