【たすけてドクター】148. 子宮ガン検診の検体採取が性交痛の一因に？
子宮ガン検診の検体採取が性交痛の一因に？
Q. 性交痛で悩んでいます。半年ほど前にカンジダ症と診断され、治療をおこなったあとから痛みを感じるようになりました。症状は治まりましたがその後、挿入時に激痛を感じます。最初の診察の際、子宮ガン検診を同時におこなうために検体採取をしたので、内部の形状が変わってしまい、痛みが生じるようになったのかと気掛かりなのですが…。
（31歳・公務員）
A.
まずは検診内容の理解を
「カンジダの治療後に、性交時の痛みが出てきたが、痛みの原因は初診時におこなわれた子宮ガン検診にあるのではないか」ということですね。この質問の背景には、子宮ガン検診でどのようなことをするのか、理解をいただいていない面があると思います。これは多くの女性に知っておいていただきたい内容でもあるため、今回は子宮ガン検診を中心にお話しします。
子宮ガンには、子宮の入り口（“頸部”といいます）にできる「子宮頸ガン」と子宮の内腔にできる「子宮体ガン（子宮内膜ガン）」の2通りがあります。病理学的にも全く別のガンで、場所が異なるために検診のやり方も違います。ちなみに、子宮頸ガンは子宮ガン全体の8割5分～9割を占めるので、子宮ガンといえばたいていこの頸ガンを指すことが多く、若年者でも見つかることがあります。これに対して残りの1割～1割5分は子宮体ガンですが、こちらは若年者はまれで、40代から発生率が上昇し50代でピークを迎えます。
検診時の痛みは「クスコ」が原因
検診は子宮の頸部あるいは内膜から細胞を採取することが本体です。ご質問者は恐らく頸ガンのみの検診をされたのだと思いますが、体ガンの説明もさせていただきます。検診を受けるにはまず、膣を開かなければなりませんので「クスコ」という鳥のくちばしのような格好をした器具を膣内に挿入します。このクスコにはSSS～Lまで様々なサイズがありますが（Lを使うことはまずありません）、男性経験の有無などでサイズを変えます。SSSならば、全開しても直径は1cmほどです。頸ガンの検診時に痛みがあるとすれば、この器具で膣口を開くときだと思います。痛みが出る原因は、クスコのサイズが合っていない、合っていても医師の操作がたまたま粗雑であった、検診を受ける側が診察に対して恐怖心を持っている、などがあるでしょう。
最初の2つは医師側の問題であり、3つ目は受ける側の問題ですが、痛みが出るはずのない操作をしていても極端に痛がる人もいて、これは以前に婦人科の診察で痛い思いをしたか、そのような経験がなくても、友人や本などから情報を得て“痛いものだと思い込んでいる”場合がほとんどです。あとは、膣に潤いがないためにクスコの挿入がスムーズにいかない、膣口付近にヘルペスなどの皮膚病変や傷がある、という場合もあります。
子宮の変形は“あり得ない”こと
クスコを挿入し開くことによって子宮頸部が見えますので、そこに木のヘラを当てて付着している分泌液を採取します。これで頸ガンの検診は終わりです。あとは、この中に頸部の細胞が含まれているので、ガラス板に塗り、固定液を掛けて顕微鏡で細胞を見るわけですが、この段階は検診を受ける方には関係ありません。
結局、クスコを挿入してから分泌液を取るまでに要する時間は数秒です。操作は膣の中だけで終わり、子宮には頸部の表面に1～2秒間触れるだけですから、質問者が心配しておられるような子宮の変形は起きようがありません。
次に、体部ガンの検診についてお話します。クスコで膣を開くところまでは同じですが、こちらは頸部とは違い、細胞を取るべき内膜は子宮の中にありますから、子宮腔内にブラシを入れ、こすって内膜細胞を採取します。このブラシは直径が2mmくらいで非常に柔らかく容易に曲がってしまいますが、子宮腔内が湾曲しているため、合わせて変形できるようにしてあるのです。このブラシは子宮の頚管と呼ばれるトンネル状の部分を通って子宮腔内に入りますが、ここが細い人はブラシが通るときに痛みを感じる場合があります。また、頚管から子宮腔内の湾曲が非常にキツイ人もいるので、途中で引っ掛かってブラシが立ち往生し、痛みが出る場合もあります。しかし、検診の所要時間は5～10秒ほどで、これによって子宮の形が変わることもあり得ないのです。
受診をして子宮内膜症の治療を
性交時の痛みについては以前にも書きましたが、子宮内膜症かどうかの検査をおこなうことが必要です。再度婦人科を受診されることをお勧めします。
