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【たすけてドクター】058. 手にいっぱい汗をかく。これって多汗症?

2018年8月1日

手にいっぱい汗をかく。これって多汗症?

Q. 私は季節を問わず、手にしずくが出るくらい汗をかいてしまい、すごく悩んでいます。友人に「多汗症では?」と言われたのですが、何科で見てもらえばいいのかわかりません。漢方でも治るものがあるのですか?
(25歳・会社員)

A. 「手にしずくが出るくらい」とおっしゃるのですから、“手のひら”に汗をかくのでしょうネ。この汗というのはいろいろな場合にかきますが、大きく分けて2通りあります。一つは「温熱性発汗」。暑い時や熱が出た時などに、体温調節のためにかくいわゆる“普通の汗”で、全身にかきます。

 これに対して「精神性発汗」というのがあります。『手に汗を握る』という表現がありますが、コワイものを見たり緊張してドキドキしたりした時、つまり精神的な興奮にともなってかく汗です。これは体温調節とは関係なく、発汗する場所も手のひらや足の裏が中心です。精神的なことが原因ですから、大脳のいろいろなところが働いています。汗腺は意識と関係なく開いたり閉じたりしているので、自分の思い通りに汗を出したり止めたりはできません。また、これを調整している神経を“自律神経”といい、さらに交感神経と副交感神経に分かれます。交感神経は緊張時に、副交感神経はリラックスした時に働く神経です。おわかりの通りこの汗腺を支配しているのは交感神経なのですネ。このことが治療の時に重要になります。

 「多汗症」には全身に汗をかきやすい“全身性多汗症”と、体の一部にかく“局所性多汗症”がありますが、全身性の場合は温熱性発汗によるもので、局所性は精神性発汗が原因になる、というのがおわかりいただけたでしょう。

 ご質問の方は局所性の中でも“手掌(シュショウ=手のひら)多汗症”だと思いますが、その原因ははっきりしていません。交感神経が緊張状態にあるのは確かなのですが、なぜ交感神経が過敏になるのかはわかっていないのです。

 したがって治療法も対症療法しかありません。つまり何らかの方法でとにかく汗を出ないようにする、ということです。自律神経の失調が原因であれば、精神的なものが関与しているだろうと考えられ、心理療法がおこなわれることもあります。発汗に対して不安を感じ、それが引き金でさらにまた汗をかいてしまうタイプの人には有効なこともありますが、調べてみると「多汗症」の人が全て緊張しやすい訳ではなく、リラックスしている時も汗が出るので、精神面からの治療はあまり効果が高くないのです。

 ほかに、アルミニウムを含んだ液やクリームを皮膚に塗って汗を抑える方法もあり、これが一番簡単でしょう。ただ、アルミニウムは吸収されると体にはよくないので濃度には注意が必要です。交感神経の働きを抑える飲み薬もありますが、効果が不安定で副作用が出ることもあり、連用は難しいようです。あとは機械を使って水素イオンを発生させ発汗をブロックするという“イオントフォレーシス”という方法もありますが、継続しないと効果が出ませんし普通は医師の指導が必要です。

 最後に、最終的な解決法として「胸部交感神経節遮断術」という手術があります。椎骨(いわゆる背骨です)のすき間から出た神経が塊を作っている部分があり、それを電気メスやレーザーメスで切断してしまうもので、手のひらの発汗は完全に停止します。普通は内視鏡手術ですので傷は小さく目立ちませんし、日帰りで終わることのできるところもあります。欠点は「代償性発汗」というもので、神経遮断されていない部位(背部、腹部、大腿部など)の汗が前よりもひどくなることがあって、その程度は人によってさまざまでやってみないとわからないようですから、手のひらの発汗がなくなってもほかのところの汗が多くなるのでは、チョット大変かもしれません。

 “どこの科にかかるか”ということについては、心因的なものが関与している場合には精神科や心療内科の受診も考えられますが、一般的には皮膚科の担当でしょう。手術となると外科か麻酔科になると思います。少し特殊な病気ですので、診てもらえるかどうかあらかじめ問い合わせをしてから受診されてはいかがでしょうか。

 さて漢方ですが、全身性の発汗であれば効果のある方剤はありますが、この方のように局所性ということになると少し難しいかもしれません。漢方の専門医に相談されてはいかがでしょうか。

poroco本誌過去掲載分から一部抜粋で掲載しています。

 

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