さっぽろカフェ連載（24）／丸美珈琲店 大通公園本店

　オープンから15年。世代を問わず愛される“街の喫茶店”という一面を持ちながらも、ニッチなファンの心も掴んで離さない。

　「丸美珈琲店」とはそんなお店だ。

　農園での栽培に始まり、生豆の精製や焙煎、抽出に至るまですべてにおいてこだわり抜いた高品質な一杯を、スイーツや季節の手づくりワッフルと一緒に楽しめる大通公園本店。店内ではきびきびとしたスタッフの働く姿も頼もしい。

　豆売り場に整然と並ぶのは世界各地から選りすぐったシングルオリジンが中心。とはいえ、初心者にもわかりやすく丁寧にスタッフが紹介してくれるので新しい味わいにもチャレンジしやすい。

　例えば「アップルパイのような風味」、「ナッツのような香ばしさ」、「ラズベリーのようなフルーティーさ」……といった具合に。月替りの豆も登場するので、訪れるたびに楽しみもある。

　オーナーの後藤さんは札幌のスペシャルティコーヒー界を牽引してきた一人。大手コーヒーショップでそのキャリアをスタートしたが、意外にも当初はコーヒーにそこまで興味を持っていなかったそう。

　”美味しいコーヒーとは何か”を求め、評判を聞きつけては全国から豆を取り寄せ試飲する日々が続く中、偶然出合ったのが札幌西区に店を構える「工房 横井珈琲」だった。

　「全国各地から豆を取り寄せているというのに、どこよりも横井さんの豆はすごかった。それは『※国連グルメコーヒー開発プロジェクト』の豆で、現在でいうところのスペシャルティコーヒーの走りでした」。

　その後、後藤さんは独立。世界各地の生産地を自らの足でまわり、こまめな買い付けでその時々に“これこそ”という豆を仕入れている。

※その土地に合った在来種を栽培し、生産方法を開発することで、発展途上生産国の経済的自立を促進するために進められたプロジェクトのこと。’97年にスタート。

　以前は丁寧に点滴のようにゆっくりと抽出していたが、現在はごく細かく挽いた豆に湯を含ませてかき混ぜ、抽出する方法「ニューウェーブドリップ」を採用。海外で知りその美味しさに驚いたというこの淹れ方は、高温短時間の抽出で香りやフレーバー、味わいといったスペシャルティコーヒーのよさをダイレクトに感じられる。

　目標はアメリカ・シアトルのように札幌の街を世界中からコーヒーを求めて人々が訪れる場所にすること。「様々な豆が自然と集まってきて、コーヒーを学ぶ次の世代が札幌を目指すような……、そのためにプロフェッショナルを育むためのラボをいずれ作れたら」とも話してくれた。

　ただし、あくまでも同店は「お客様に飲んでいただいて、美味しいと思っていただけるかどうかが提供する際の基本」と話す後藤さん。

　「スペシャルティーコーヒーは難しいから……」そんなイメージを持つ人にこそ、まずは訪れてほしい一軒である。

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