【たすけてドクター】048. 子宮癌検診で不安な結果が…。
子宮癌検診で不安な結果が…。
Q. 毎年子宮癌検査を受けていて、3年くらい前に「半年に1回検査をしてください」と通知がきました。あとで先生に聞くと「癌細胞が出てきた時に癌細胞を促進してしまうウィルスに感染している可能性があるので半年に1度検査にきてください」との事でした。
その次の年にまた検査に行きましたが、「1年に1度の検査」に戻っていました。何かに感染していたのでしょうか？
(32歳・会社員)
A. まず、子宮癌検診についてお話します。癌検診はそもそも「自覚症状が出る前に微少な細胞レベルか、ごく初期の段階で癌の発生を見つけましょう」ということでおこなうものですから、症状が出てからでは遅いのですネ。特に30歳以上の方は毎年の検診をおすすめします。御質問の方は20歳代から検診されているようで、感心なことですね。若くして子宮癌で亡くなるという例もありますので、若い人でも機会があれば積極的に検診された方が無難です。
子宮癌は子宮の入口部分の「頚部」にできる“頚癌”と、本体の「体部」にできる“体癌”と、発生部位によって2種類に分かれます。体癌はある程度年令が進んでから増えてきますので、今回は頚癌について説明します。
子宮を膣の側から見ると、膣の一番奥にある子宮の入口が少し盛り上がっており、そこを“子宮膣部”といいます。子宮膣部の真ん中には子宮腔内に通じる細い管が通っていて、それを頚管と呼び、ここに癌ができます。頚癌は全子宮癌の9割を占め（残りの1割が体癌）、単に子宮癌というとこの頚癌を指すことが多いようです。
さて頚癌の原因ですが、パピローマウイルスやヘルペスウイルスが子宮膣部に感染して細胞を癌化させると考えられています。ではこのウイルスはどこからやってくるのでしょうか…。実は性行為によって男性から来るものなのです。
処女の方には頚癌は発生しないといわれており、頚癌のリスクは生涯の性交回数が多ければ高くなり、初交年令の低い方、男性経験の豊富な方ほど“危ない”ということになります。
ただし“頚癌になる”＝“男性経験が豊富”というわけではありませんので念のため。ウイルスの感染がただちに癌化に結びつくかどうかは、遺伝的体質など感染を受けた女性側の条件も問題になるからです。
ちなみに、体癌は逆に性行為の少ない方がなりやすくなります。
細胞を顕微鏡で見て良性か悪性かの判断をつけることを細胞診といいますが、この結果はクラス分類と言って、[1]から[5]まで分かれます。
[1]は異型な細胞を認めない、[2]は異型な細胞を認めるが悪性所見はない、という意味です。ほとんどの方はこの[1]か[2]ですネ。
[3]は悪性のある異型細胞を認めるが、決定的に悪性と判定できない、となります。そしてこの[3]はさらに[3a]と[3b]に分かれます。
癌というのは急になるわけではなく、少しずつ異常の程度を高めていってなるものなのですが、この癌と正常の中間領域があって、これを“異形成”といいます。「このままいくと癌になる可能性がある」という段階で、あくまでも“可能性がある”ということですので、「時間が経つと必ず癌になります」ということではありません。
クラス[3aは]“軽度異形成”でギリギリ経過観察で良いレベルを示します。この場合には3カ月後に再検することが多く、その結果、[2]や[1]に下がることもあります。[3b]になりますと“高度異形成”の状態になり、ただちに組織診という検査に入ります。
[4]は悪性が強く疑われるので、上皮内癌が考えられ、[5]はもう“立派な”癌で、上皮内癌より進んだ癌（浸潤癌）が想定されます。
[1]か[2]では、普通は1年後に再検ということになりますが、[2]にも[2r]というのがあって6カ月後に再検する場合があります。【ｒ】はリピートのｒで、「[3]aほどではないが一年間放っておくには少し心配があるので、短い期間で再検査した方がよい」という意味です。御質問の方は最初はこれだったのではないでしょうか。
クラス分類の[1]から[5]の数字を、進行した癌の分類である[1]期から[4]期の数字と勘違いされる方がいますので、お間違えのないように…。これは臨床進行期分類といって癌と確定した人に対して用いられるもので、[0]期（これは上皮内癌です）から始まり、癌の広がり方によって[4]期まであります。
以前、細胞診でクラス[3a]の出た方に「まだ癌ではない」と説明したにもかかわらず、青い顔をして御主人と一緒に来院された例がありました。もう[3]期になっていると思われたのでしょうネ。
