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【たすけてドクター】052. 婦人科系の症状に効く漢方を知りたい

2018年8月1日

婦人科系の症状に効く漢方を知りたい

Q. 生理が不規則、冷え症など婦人科特有の症状に効果的な漢方を、改めて教えてください。
(36歳・会社員)

A. 婦人科領域で使われる漢方薬はかなりの種類があります。また、各科の中でも産婦人科が漢方を一番多く処方している、というデータもあります。

 漢方は症状だけではなく、その人の体質に合うかどうかも重要で、“ある人に効いた薬が別の方にも必ず効くとは限らない”ということもあります。また、ご質問にあったように、産婦人科だけで使われる漢方薬というのは存在せず、その患者さんの状態にあわせて薬を考えるので、原則的には全ての種類の漢方薬が使われる可能性があります。

 前置きはこれぐらいにして、さっそく説明に入りましょう。

 まず「当帰芍薬散」(トウキシャクヤクサン)という薬について。今までも何度かご紹介してきましたが、恐らくこれが産婦人科で一番使われる漢方でしょう。

 血の巡りが悪く、体質的に虚弱で(虚証)冷え性があり、皮膚がカサカサしたり、むくみやすい人に向いています。

 漢方の診察法に“腹診”というものがあります。これは日本で漢方を処方する際の独自の診察方法ですが、お腹を触診し、おヘソの少し下の方を押して痛ければ、特に「骨盤内の血の巡りが悪い」と診断され、この状態を「オ血」(オケツ)と呼びます。

 簡単に言うと、この「オ血」の症状があってヤセ型の人であれば、症状が何であっても(産婦人科に限らず)「当帰芍薬散」を考えます。似た漢方薬で「当帰建中湯」(トウキケンチュウトウ)がありますが、こちらはむくみは関係がなく、食欲があまりないような虚弱体質の人で、生理の後半に痛みを生ずる人に効果的です。

 次に「桂枝茯苓丸」(ケイシブクリョウガン)。

 これは「当帰芍薬散」の症状に似ていますが、もう少し体力的にしっかりした人(実証)によい漢方薬で、「オ血」を取る力-駆オ血作用-が強く働きます。

 むくみにはそれほど効きませんので、必要な場合には「五苓散」(ゴレイサン)などを加えることがあります。「桂枝茯苓丸」はニキビや痔にも使うことがあります。これらも漢方では「オ血」ととらえるのです。

 また「桃核承気湯」(トウカクジョウキトウ)というのがあります。

 “核”は種のことで文字通り桃の種が入っています。これは駆オ血作用が強くより実証タイプの人向きの薬で、痩せて弱々しい人には使いません。便秘がひどく生理中にイライラなどの精神症状が強く出る時に多く使いますが、普通の便秘薬としてもよく使われます。

 腹診をし、左側の前にある骨盤の骨のデッパリを内側からこするように押すととても痛いことがあり、このような時には「桃核承気湯」がピッタリです。

 参考までに便秘があって右側が痛ければ「大黄牡丹皮湯」(ダイオウボタンピトウ)を考えます。昔は虫垂炎に使った漢方薬ですが、月経障害にももちろん適応となります。

 他に「通導散」(ツウドウサン)という、便秘の症状は同じですがお腹が張って少し肥満タイプでのぼせのある方に良い薬もあります。

 更年期障害に多く処方されることで有名な「加味逍遥散」(カミショウヨウサン)は、お若い方の月経障害にも使われます。

 不眠や不安、落ち込みなどの精神症状を伴っている場合に効き、不定愁訴(=原因不明で体調が悪いこと)の多い方といえば「加味逍遥散」と言われています。柴胡(サイコ)という生薬が入っている漢方薬を“柴胡剤”といい、「加味逍遥散」も柴胡剤の1つとなります。

 腹診をして右側の肋骨の一番下のところを押すと痛かったり、重苦しさがあるという人は、色々な症状にこの柴胡剤が効くのです。ちなみに、この柴胡には駆〓血作用もあるので、上記で述べた当帰芍薬散などの漢方薬を様々な柴胡剤と併用することがあります。この「加味逍遥散」は虚証の人向きですが、同じような症状で実証の人には「女神散」(ニョシンサン)を使います。

 まだいろいろあるのですが、またの機会にしますネ。

poroco本誌過去掲載分から一部抜粋で掲載しています。

 

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